トレンドその2

ロイヤルティの高い顧客はパーソナライズを期待している

パーソナライズは標準装備──それでも顧客が満足していない理由とは?

パーソナライズは、もはや「あれば嬉しい」ものではなく、「顧客との関係構築の土台」と言えます。先進企業の多くは、文脈に即したデータやAIを活用し、エンゲージメントの向上、コンバージョンの最大化、そして長期的なロイヤルティ構築を目指しています。

しかし、企業と消費者の間には、依然として明確なすれ違いがあります。企業はパーソナライゼーションへの取り組みを5点満点中4.1点と評価し、卓越した体験を提供していると考えていますが、消費者はそれほど納得していません。企業のパーソナライゼーション体験を「優れている」と答えた消費者はわずか16%で、44%が「良い」、31%が「平均的」と評価しており、企業の自己評価との乖離が明らかになっています。こうしたギャップの存在は、顧客とのすれ違いを意味する一方で、期待に応える余地がまだ残されていることも示しています。

なかでも大きな見落としが、「顧客が好むチャネルで届ける」こと。どれほど丁寧に設計されたメッセージでも、届け方を間違えると、かえって逆効果です。チャットでの即応性を求める人もいれば、電話での丁寧な対応を重視する人もいます。多くの人にとって、SMSは最も気軽な選択肢かもしれません。適切なタイミングで、適切なチャネルで届けなければ、パーソナライズされた体験もありふれたものに感じられてしまいます。 

実際、対面以外でのやり取りでは、50%がEメール、40%がメッセージアプリを好むと回答しています。チャットボット(15%)やビデオ(10%)の人気は相対的に低く、メッセージの中身だけでなく「届ける手段」もパーソナライズには不可欠です。

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87%の企業が、パーソナライゼーションを最優先事項と考えています(前年比11ポイント増)。 

一方で26%の顧客は「パーソナライズが感じられない企業からは離れる」と回答しています。 

パーソナライズがもたらすROI──企業と顧客の見解は?

消費者は、パーソナライズを提供する企業に対して「より多く支出する」傾向がありますが、その認識にはズレがあります。企業の75%が「パーソナライズによって顧客単価が平均32%向上した」と回答しているのに対し、消費者の54%のみが「より多く支出している」と回答し、昨年同様、平均で37%増加したと認識しています。

企業はパーソナライズと購買の増加に強い関連性を見出していますが、世代ごとにその反応は大きく異なります。

Z世代の65%、ミレニアル世代の62%が「支出が増える」と答える一方、X世代は45%、シニア世代ではわずか35%にとどまります。

地域別でも傾向に差が見られ、米国(42%)、EMEA*(44%)に対し、APACでは60%、LATAMでは65%がパーソナライズによって支出が増えると回答しています。つまり、パーソナライズをおろそかにすることは、機会損失にとどまらず、確実な収益の取りこぼしに直結しているのです。

世代別に見る、パーソナライズが支出に与える影響

の消費者が、自分の好みに合ったエンゲージメントを受けた企業から繰り返し購入しています。

パーソナライゼーションの効果は単なる売上にとどまりません。長期的な関係構築にも寄与します。エンゲージメントが顧客の好みに合っていると、45%が再購入し、43%が他者に推薦すると回答。一人ひとりの好みに応じた対応によって単発の購入者が、企業にとって価値のあるファンへと変わっていきます。

パーソナライズは顧客への付加価値ではなく、購入を後押しする前提条件になっています。64%の顧客が「購入判断にパーソナライズされた対応が重要」と答えていることからも、その重要性は明らかです。パーソナライゼーションへの投資は、顧客体験を深め、売上とLTVを伸ばし、長期的なロイヤルティを築く鍵となります。

*EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)には、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の回答者が含まれます。

成果を左右するのは、リアルタイムなパーソナライズ対応

たとえば、こんなシーンを想像してください。シカゴに住むある顧客が、初雪の日の昼休みにスマートフォンでコートを探していたとします。その少し前に手袋を購入していたようです。こうしたリアルタイムの背景や状況こそが、絶好のパーソナライズ機会になります。

その瞬間を逃すと、販売機会を失うことになります。 こうした「いま」に応えるため、企業はリアルタイムパーソナライゼーションに力を入れ始めています。 適切なタイミングで、適切なメッセージを届けることが、成果を大きく左右します。 

 

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顧客の行動や好み、状況に応じてやり取りを即座に最適化することで、より関連性の高い魅力的な体験を実現できます。現在、90%の企業がリアルタイムでのパーソナライズ対応を提供しており、全体の顧客エンゲージメントのうち平均44%が、リアルタイムで行われています。

実際、リアルタイムで顧客とつながっている企業は、そうでない企業の2倍以上の効果を実感しています。 、消費者側も、88%が「リアルタイムでのパーソナライズがあれば購入意欲が高まる」と回答しており、そのうち35%は「大きく高まる」としています。適切なタイミングで適切な体験を提供することで、コンバージョン率を直ちに向上させることができます。

成果を引き出す最大の鍵は、リアルタイムデータと「文脈」の掛け合わせにあります。「いま何をしているか」だけでなく、「なぜその行動をしているのか」までを理解することで、体験は一気にパーソナルなものになります。

絶妙なタイミングでの提案は、売上を生むだけでなく、信頼関係の構築にもつながります。現代の消費者は、数時間後や翌日ではなく、「いまこの瞬間」の対応を期待しています。その期待に応えられない企業は、売上を逃すだけでなく、顧客そのものを競合他社に奪われてしまうでしょう。

企業がリアルタイムでパーソナライズしていない際、消費者がとった行動

パーソナライズで成果を出す4つのポイント

パーソナライゼーションは一度やれば終わりではありません。 リアルタイムで進化し続ける戦略であり、常に見直しと改善が求められます。

うまく機能すれば、顧客体験を向上させるだけでなく、コンバージョン率の向上、エンゲージメントの深化、そしてロイヤルティの強化にもつながります。期待に応えるだけでなく、それを超えていくことで、競争の激しい市場でも企業としての存在感を高め、顧客に選ばれ続けることができます。

では、どのように実現すればいいのでしょうか? 

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  • パーソナライゼーションを戦略の中心に据える

    後付けではなく、最初からパーソナライズを前提とした設計を。個別に最適化された体験が、エンゲージメントの向上、コンバージョンの増加、ロイヤルティの強化を実現します。

  • リアルタイムで顧客とつながる

    顧客が行動を起こす「その瞬間」を捉えて対応を。タイムリーで関連性の高いコミュニケーションが、コンバージョンを後押しし、取りこぼしを防ぎます。

  • 変化するニーズに柔軟に対応する

    世代や属性ごとに期待値は異なります。その違いを理解し、アプローチを柔軟に調整することで、より深いエンゲージメントにつながります。
  • パーソナライズ戦略を継続的に進化させる

    パーソナライズは一度設定して終わりではありません。顧客行動を分析し、新しい手法を試し、常に最適化を重ねていくことが、期待を超える体験づくりの鍵です。

調査データ

パーソナライズされたエンゲージメントを提供している企業の割合 

企業によるパーソナライズ提供の自己評価

パーソナライズ対応による顧客の支出傾向

企業によるパーソナライズの重要性に対する消費者の意識

事例紹介

Commureのオムニチャネル・コミュニケーションで実現する、患者エンゲージメントと医療成果の向上

Twilioの技術を活用したCommureの患者エンゲージメントソリューションは、医療提供者がよりパーソナライズされたケアを提供しながら、コストを削減することを可能にします。フォローアップの強化、再入院の抑制、バーチャルケアの効率化により、医療機関はコストのかかる問題を解消し、リソースを最適化して、より良い医療成果を実現しています。

70%削減

予防ケアスクリーニングの無断キャンセル率 

56%削減

循環器科モニタリングプログラム対象患者の再入院率

患者満足度94%

遠隔医療の準備に関する案内・コミュニケーションへの患者満足度