トレンドその1

AIは企業と顧客の双方に利益をもたらすべき

AIはビジネスの成長を推進していますが、消費者の役にたっているでしょうか?

AIが話題の中心にあるのは間違いありません。業務効率、カスタマーサポート、マーケティングまで、あらゆる分野に組み込まれつつあります。そして実際に、AIを活用してパーソナライズを実現した企業の96%が、ビジネスメリットを実感しています。

AIはパーソナライズ以上に、業務改善でも数字に表れる成果を出しています。回答のスピードが上がり(51%)、データの整理が進み(47%)、顧客満足度が向上する(45%)など、現場の手応えも明らかです。 

とはいえ、ここで重要なのは「それらの成果が、本当に顧客体験の向上に結びついているのか?組織のKPIのためだけになっていないか?」という問いです。

企業の主なAI活用例 

AIは、企業だけでなく顧客の役にも立ってこそ意味がある

たとえば、サラという女性が、配送先の住所を変更するために電話で問い合わせしたとしましょう。シンプルな用件のはずです。 

ところが、AIの音声エージェントとのやりとりは、終わりのないループに。何度伝えても、うまく通じない。言い直しても、誤解される。また試す。結果は同じ。イライラが募り、ついには「オペレーターに代わって!」と叫ぶことに。 

こんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。AIはアシスタントというより、かえってハードルと感じられることもあります。

こうした体験は、サラだけのものではありません。AIは多くのメディアで取り上げられ、議論の的にもなっていますが、55%の消費者は「もう聞き飽きた」と感じ、45%は「関心がない」と答えています。 

Woman holding a phone to her ear, looking thoughtful with finger on her lips, wearing a yellow shirt and a watch.

消費者がAIに期待する体験改善ポイント

消費者の間ではAIへの過熱感に疲れが見られますが、体験向上につながるなら受け入れる姿勢もあります。世界の消費者の71%が「AIは自分の体験をよくしてくれるだろう」と考えており、そのうち「強くそう思う」「ある程度そう思う」と答えた人の割合は、2024年の32%から2025年には43%に増えました。 

そして、若い世代ほどAIに前向きです。Z世代の73%、ミレニアル世代の76%が「AIで体験が良くなる」と考えています。X世代(69%)やシニア世代(61%)よりも楽観的です。地域別では、APAC(80%)とLATAM*(73%)の期待値が特に高くなっています。

要するに、AIには期待している。でも、言葉よりも「効く例」を体験させてほしい。それが本音です。

*アジア太平洋地域(APAC)には、オーストラリア、香港、インド、インドネシア、日本、フィリピン、シンガポール、タイの回答者が含まれます。LATAM(ラテンアメリカ)には、ブラジル、チリ、コロンビア、メキシコの回答者が含まれます。

AIは効率化だけでなく、体験向上にこそ力を発揮すべき

消費者が求めているのは「AIそのもの」ではなく、「本当に役に立つ体験」です。スピーディーかつスムーズに問題解決をし、やりとりをもっと自然に——それが理想です。以下に、AI活用に対する消費者の声をまとめました。 

  • AIに切り替わったこと、消費者はちゃんと気づいています。 81%がサポート中にAI対応だと認識しており、70%は「人間らしいやりとり」が重要だと答えています。これは前年の48%から大幅な増加です。
  • パーソナライズの主導権は、消費者にあるべき。84%が「自分で設定したい」と考えています。どのデータを使うか、どう使うか、それを選べることが求められています。
  • 「やっぱり人がいい」——そう思う瞬間もある。54%の消費者は、AIだけでは対応が不十分なときに人に代われる仕組みを求めています。

ちゃんと工夫すれば、違った結果が生まれます。AIを上手に活用すれば、こうした期待に応える体験もつくることができます。たとえば、欲しい商品がなかなか見つからないときにチャットボットが「どんな商品がお好みですか?」と尋ねてくれれば、選ぶ側にとっても気持ちのよい体験になります。主導権が自分にある感覚があることで、AIによるサポートが自然に受け入れられるのです。

AIはしばしば「効率化のための道具」として語られがちですが、消費者が本当に求めているのはスピードだけではありません。意味のあるやりとりや、今の自分に合った情報、考えを理解してくれるような応対——そうした「価値のある体験」が求められているのです。求められているのは、思慮深く、関連性のあるコンテンツと、意味のあるやりとりです。ただ問題を早く解決すればよい、という話ではないのです。AIは人間の代わりになるものではありません。人と人とのつながりを補い、強化する役割を担うべきです。そこにこそ、AIを活用する意味があります。

消費者がAI活用企業に望むこと4選:  

消費者の84%が自分自身でパーソナライゼーション設定を調整したいと考えています。

AI時代のプライバシーに、消費者の61%が懸念

AIが体験向上に役立つと理解していても、多くの消費者は企業によるAIの使い方に懐疑的です。実際、消費者の61%が「企業は個人データを利己的な利益のために使っている」と感じています。 

しかし、企業側はAIの透明性を十分に確保できていると考えています。「AI活用について開示している」と答える一方で、それに納得している消費者はわずか46%。さらに、自分のデータがAIに使われていることを知らされていると答えた人は、たった34%にとどまります。

実のところ、消費者がこうした不安を抱くのも無理はありません。企業側が挙げたAI導入における主な課題を質問した際に、我々はこんな回答を得ました。

  • 44%が規制対応・プライバシーへの対応の難しさを感じている

  • 41%がセキュリティリスクに直面している

  • 38%がデータの品質と精度の課題に苦労している

B2B企業にとっては、AIの課題はより深刻です。たとえば、データの精度と質については、B2Cより17ポイントも高い43%が「課題」と感じています。スケーラビリティについても同様で、32%が問題を抱えています(B2Cでは20%)。

AIは大きな可能性を持っています。でも、それを活かすには「信頼」が欠かせません。 では、その信頼をどう築くか?—答えは、透明性です。オプトアウトではなく、オプトインできる設計にすること。それが、AIを「使い方が見えない不安な存在」から「価値ある仕組み」へと変える方法です。

Person with headphones playing on a computer at a gaming setup, screen displaying a scenic background.

消費者の54%が、「AIとやりとりしていることを明示してほしい」と考えています。

消費者の49%が、「自分のデータがAIでどう使われているかを明確にしてほしい」と考えています。

AIを、信頼される体験のパートナーに

AIはもはや「未来の話」ではありません。今ここにある現実です。今後5年間で97%の企業がAIへの投資を増やす予定であり、そのうち77%は1年以内に強化を図ると答えています。導入は「選択」ではなく、「前提」になりつつあります。 

戦略的に活用すれば、AIはエンゲージメントを高め、業務の効率化を促し、ブランドと顧客とのつながり方そのものを再定義する力を持っています。ただし、正しく扱われなければ、信頼を損ね、顧客を遠ざけるリスクも同時に伴います。

顧客エンゲージメントを本気で変えたいなら、AIの使い方を見直すべきポイントがあります。

  • AI活用には、一貫した透明性を

    AIが使われていることそのものよりも、「どう使われているか」が信頼を左右します。透明性は、責任あるAI活用の基本です。

  • AI体験の主導権は、顧客に

    パーソナライズ設定からデータの使い方まで、顧客が自分で決められる設計にすることが、満足度と信頼を高めます。

  • AIのぎこちなさをなくす

    無機質なやりとりではなく、自然で直感的な応対こそが、AI体験における基本品質です。

  • AIは「代替」ではなく「補完」の役割で

    反復業務はAIに任せつつ、人による対応が必要な場面では自然に切り替わる設計にすること。文脈を理解し、人の出番を見極めることが信頼を生む鍵です。

調査データ

企業の現時点におけるAI活用例トップ4

消費者はAIにより顧客体験が強化されると考えているかどうか

AIとのやりとりが「人間らしい」ことが重要と答えた人 

AIにおけるデータ活用の開示についての、企業と消費者の認識差 

事例紹介

Universidad Uk、TwilioのAI活用で学生と従業員の体験を最適化

Universidad Ukは、Twilio FlexとTwilio Segmentを活用して、従業員向けのコンタクトセンター運営をリアルタイム分析とレポートに基づき最適化しました。さらに、学生向けには統合プロフィールとエージェントコパイロットを導入することで、リアルタイムデータとAIを活用したパーソナライズと効率化を実現しました。

Young middle east student girl smiling happy using smartphone at the city.
70%

導入から3か月でバーチャルエージェントによる対応率が30%から70%に向上。 

25%

の新規顧客のコンバージョン率向上

45%

の運用コスト削減