顧客エンゲージメントの「ねじれ」: AIが期待値ギャップを埋められない理由
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顧客エンゲージメントの「ねじれ」: AIが期待値ギャップを埋められない理由
昨年、AIの急速な進化により、ビジネスは大きな転換点を迎えました。業務の効率化、データ分析の高度化、そして長年の課題だった「本当のパーソナライズ体験の実現」へ—企業は強力な武器を手に入れたかに見えました。
では、あれから1年。私たちは今、パーソナライズ体験の黄金期を迎えているのでしょうか?答えは「まだその域には達していない」です。
AIの技術が大きく進歩したにもかかわらず、多くの消費者は「昨年と比べて、企業により理解されている」とは感じていません。82%のビジネスリーダーが「自社は顧客を深く理解している」と考える一方で、それに同意する消費者はわずか45%にとどまっています。 このギャップは、実は昨年よりもやや拡大しています。顧客との距離を縮めるはずのAI—なぜ、逆に「ねじれ」を生んでしまっているのでしょうか?
この問いへの答えを探るため、Twilioは世界18か国の7,640人の消費者と637人のビジネスリーダーを対象に調査を実施。2025年の顧客エンゲージメントを形づくる主要トレンドを明らかにしました。 顧客エンゲージメント現状分析2025 では、今の消費者が企業とのやりとりに期待していることと、企業の進むべき道のりを明らかにしています。
その結果、企業の認識と顧客の現実との間の隔たりが拡大されつつあることがよりはっきりしてきたのです。信頼を築き、ロイヤルティを高め、長期的な成長を促進するためには、企業はこのギャップを埋める必要があります。それでは、このレポートで明らかになった主要トレンドをいくつか見ていきましょう。
1.AIは企業と顧客の双方に利益をもたらすべき
ブランドが考えるAIの活用は、自分たちのためになることが多く、サポートの自動化、時間の節約、データの整理、従業員の効率性の向上になりがちです。しかし、より重要な問いかけは、顧客にどのようなメリットがあるのか、ということです。
たとえば、AIチャットボット。問い合わせ件数を減らし、応答時間を短縮できるため、サポートチームにはメリットがあります。でも、肝心の課題を解決できなかったり、ピントのずれた返答でかえって顧客をいらだたせてしまったりすれば、本来改善すべき“体験”を損ねるリスクにもなります。
AIに関しては、明確に信頼のギャップがあります。企業の88%がAIの使用に関して透明性があると回答していますが、それに同意する消費者は46%にすぎません。半数以上(54%)が対話の相手がAIであることを知りたいと考えており、ほぼ同数(49%)が自分のデータの使われ方について明確な説明がほしいと考えています。
それでも、消費者はAIに反対ではありません。もっと責任を持って使用するように、ブランドに求めているだけです。実際、71%の消費者が「AIは体験をポジティブに変えてくれる」と考えています。ただし、これは、消費者が常にAIを求めているという意味ではありません。それどころか、消費者の54%は、AIでは解決できない場合に確実に人間とつながることができる、簡単なオプトアウトオプションを求めているのです。
この話のポイントは、消費者は、AIの活用を増やしてほしいわけではなく、透明性があり、思いやりがあり、常に人間によるバックアップがある、これまでより優れたAIを求めている、というところにあります。
2.ロイヤルティの高い顧客はパーソナライズを期待している
もはやパーソナライズは、「あれば嬉しいもの」ではありません。今や、スピードと関連性を両立させるにはAIの力が欠かせないということを、多くのビジネスが認識しています。昨年、76%の企業がパーソナライゼーションを最優先事項と考えていました。今年、その数字は87%に上昇しています。
とはいえ、企業側がその重要性を理解している一方で、その効果を実感している消費者はまだ少数派です。企業はパーソナライゼーションへの取り組みを5点満点中4.1点と評価していますが、消費者はそれほど納得していません。これらの体験を「優れている」と答えたのはわずか16%で、44%が「良い」、31%が「平均的」と答えています。
それをやり遂げた企業には、莫大なメリットがもたらされ、購入数の増加、支出額の増加、友人や家族にブランドを勧める顧客の獲得が実現します。本当の差別化ポイントは何か?それは、リアルタイムのデータに「文脈」を掛け合わせること。顧客が「何をしているか」だけでなく、「なぜそうしているのか」まで理解して初めて、 プログラムっぽくない、本当に自分のためと感じられる体験が生まれるのです。
3.信頼を築く鍵は、「透明性」と「信頼性」
昨年は、データ保護が消費者の信頼獲得の最大の原動力でした。2025年には、優先順位に変化がありました。迅速なサポート対応やスムーズな返品対応が、強固なデータセキュリティよりも重視されるようになっています。
とはいえ、データ保護は依然として消費者の信頼を高める方法として3番目に重要であるため、企業は今まで通り最優先事項とすべきです。対応を誤れば、顧客との関係が著しく損なわれる可能性があります。実際、「自分のデータを完全に信頼して任せられる」と答えた消費者はわずか15%。さらに61%が、「企業は個人情報を自分たちの利益のために使っている」と感じているという結果も出ています。強力で透明性の高いデータ管理は単なる法的要件ではなく、顧客の信頼を獲得し、維持する上で重要な役割を果たします。
メッセージは明確です。信頼は進化しています。消費者は今も、適切なデータ管理を求めています。 ただそれだけではなく、スピーディでストレスのない体験も同時に期待しているのです。企業は両方を提供する必要があります。
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エンゲージメントの未来は、単に速さや賢さだけではなく、より人間らしくあることです。2025年以降にリードする企業は、 AIをただの自動化ツールではなく、顧客体験を高める存在として活用し、 すべてのやりとりを直感的で、パーソナルで、意味あるものに変えていくでしょう。
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