Twilio SIGNAL 2022をお客様事例講演を通じて振り返る

January 16, 2023
執筆者
Twilion
レビュー担当者
Twilion

Twilioの年次最大カンファレンスであるSIGNALイベントが、2022年11月上旬に終了しました。多くの講演セッションはサイト上で引き続きオンデマンド聴講可能ですが、セッション数も多くどこから手をつければよいか迷うかもしれません。このような背景から、お客様事例講演を中心として数編を厳選し以下にそのハイライトを示すことで、皆さまのオンデマンド聴講体験をできるだけ円滑なものにしたいと思い、本ブログを執筆いたしました。お役立ていただければ幸いです。

なお、SIGNAL 2022イベントに関連してこれまでに投稿した日本語ブログの一覧を以下に掲載しました。主にお客様事例以外の内容をカバーしており、併せてお読みいただければと思います。


SIGNAL 2022ではお客様企業やパートナー様のご支援をいただき、30以上のブレークアウト講演をお届けしました。以下に筆者の独断と偏見の下に厳選した講演について、ハイライトを記載いたします。

いずれの講演もオンデマンド聴講を開始後、画面右下部の「CC」(Closed Captionの略) で「日本語」(もしくは「Japanese」) を選択いただくことで、日本語字幕が表示されます。英語による講演でご活用ください。

CCasJP

三越伊勢丹様

三越伊勢丹様は、2020年11月にスマホ向けのアプリケーション「三越伊勢丹リモートショッピング」(App StoreGoogle Play) をリリースされています。百貨店という店舗、ECサイトにおける接客に続く、いわば買い物の第3の場として消費者の方々に利用されているようです。

MIjp

ご講演では、大きくは買い物体験のデジタル変革(DX)施策の視点から、そして具体的なプロジェクトとして、リモートショッピングのアプリ開発に向けた経緯や実際の開発プロジェクト推進についてお話しいただいています。リモートショッピングに関する三越伊勢丹様のホームページ(例1例2)も背景事情として興味深いと思いますので、ぜひ併せてお読みください。

筆者もアプリの1ユーザーですが、ユーザー導線(+動線)の最適化の工夫を感じられるアプリのように思います。関連するTwilioサービスとしては、店舗のスタイリストと顧客との間でチャットが可能となるようにTwilio Conversationsを、そしてビジュアルに商品をご案内する方が効果的な場合にはTwilio Videoをご利用いただいております。その他、リモートショッピングアプリ以外のユーザー動線などにおいてTwilio EmailおよびTwilio SMSもご利用いただいている点も付記させていただきますね 🤗。

 ❏❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約14分)❏❏❏ 講演概要はこちら ❏❏❏


Toyota Connected(トヨタコネクティッド)様(北米)

Toyota Connected様については、カンファレンス初日の基調講演においてCEOのスティーブ・バスラ氏にオンライン登壇 (*1) いただいたのに加え、エンジニアリング部門のアイザック・ブロイレス氏にブレークアウト講演をご担当いただきました。(*1 オンデマンド聴講はこちら、39分20秒の時点まで早送り)

TCjp

ブレークアウト講演の主眼は、Toyota Connected様が北米でレクサスをお買い上げのドライバー(顧客)に展開するサービス「Drivelink」(関連ページ、関連ソーシャル投稿) についてのご説明、Drivelink関連の顧客問い合わせを受けるコンタクトセンターの刷新、顧客問い合わせの一部コールフローにおけるGoogle Cloud Contact Center AIとの連携といったところにあります。コンタクトセンターの刷新においてはTwilio Flexを選択いただき、従来ベースのソリューションからTwilio Flexベースへのカットオーバー、またセンター運用に関する将来展望などについてもお話しいただきました。

Drivelinkには、レクサスの衝突を検知して発報する自動通知やドライバーの意思に基づくSOS連絡といった緊急性の伴うオペレーション、目的地への移動アシストといったその対極にあるオペレーション部分が混在します。多様なサービスラインアップを支えるプラットフォームとして柔軟性があり、Toyota Connected様ご自身がフルカスタマイズを設計・実装できることがセンター刷新における要件として重要だったそうで、顧客エンゲージメントを最適化する際のヒントが本講演にあったようにも思います。

 ❏❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約23分)❏❏❏ 講演概要はこちら ❏❏❏


Audibene(オーディベーネ) 様(独)

Audibene様のご講演では、補聴器の導入を検討したい、でも都市部の店舗まで(パンデミックのご時世ということもあり)行けない(あるいは聴覚の課題があるため導入検討のために店舗まで出向くこと自体に気後れしてしまう)という方々が主人公となります。そういった顧客の視点からは、導入前の相談を行う、導入を進めるとして初回のチューニングを行う、実際に使い始めてから不明点や困りごとが発生する、といった顧客ジャーニーを経ることになります。

AudibeneJP

Audibene様はテクノロジーをオンライン上で活用することでこの顧客ジャーニーを近代化しようと、10年ほど前にその歩みを欧州市場で開始されました。(英語の記事例: 記事1記事2)顧客視点に戻り、導入前の相談段階においてはTwilio Flexを活用したコンタクトセンターを展開されておられます。また補聴器を直近において導入する必要がないと判断される顧客に対しては定期的にTwilio Messagingでフォローを掛けるようにしていらっしゃいます。

補聴器の導入を推進する顧客の場合、補聴器の伴うライフステージを顧客が順調に開始されるようにとの視点から、Audibene様はチューニングのための一連のキットを顧客の自宅まで郵送します。このキットには補聴器に加え、タブレット端末、両者の接続ケーブル、そしてネットワーク接続のためのIoT環境が含まれます。キットを受領した顧客はWi-FiがなくてもIoTを通じたモバイル接続をいつでもどこでも確立でき、タブレット上でビデオセッションを起動し、補聴器がタブレットに接続された状態で、店舗に居る(リモート側の)担当者のチューニングセッションに参加します。もうお気づきになられたかもしれませんが、Twilio IoT (*2) とTwilio Videoを組み合わせたシステム上でこのユーザー体験が展開されているという訳です。(*2 国内では展開しておりません。)

チューニング後にタブレット等を返却いただくことになりますが、ユーザー体験としては自宅という他に誰も居ない環境でチューニングを行えることに対する安心感の要素が大きいようです。実際に補聴器を使い始めてから発生する不明点やお困りごとに対しても、Twilio Flexを活用したコンタクトセンターで対処をされています。ぜひご講演全体をお聞きいただき、ユーザー体験を重視されるAudibene様の思いを実感いただければと思います!

 ❏❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約16分)❏❏❏ 講演概要はこちら ❏❏❏


Tovala 様(北米)

このセッションではお客様企業2社をお迎えし、各々にご講演をいただいております。先行するDouglas社様の講演も重要な視点を含むのですが、本ブログでハイライトしたいのは後半のTovala様の講演です。

Tovala様は食材キットの宅配サービスを展開されておられます。その特徴は単純なキットの宅配ではなく、Tovala様が提供されるスマートオーブンが伴う点です(ウェブページ1ページ2)。スマートオーブンはネット接続され、週次で届けられる食材キットに添付されるQRコードをスマホアプリで読み取り、オーブンに情報展開するなかで、食材に合わせた調理手順の詳細をオーブンがダウンロードし、ユーザーによる調理への介在を最小限に抑えつつも、栄養が考慮された美味しい食事が手軽に出来上がるというメリットが享受できるのです。

TovalaJP

このオーブンのネット接続にはTwilio IoTが活用されており、ネット接続はその他にもオーブンの機能強化(ソフトウェアのアップデート)や、個人情報が取り除かれた調理状況に関するデータのアップロードなどにも利用されており、スマートオーブンのスマートたる所以となっています。(その他にもネット接続されたオーブンならではのストーリーが講演中に語られていますので、11分00秒の時点まで早送りして聞いてみてください!

また、Tovala様のシステムでは各種のデータがスマホアプリやオーブンから収集され、活用されています。これらデータは発注頻度、食事の好み、調理実態など多岐に渡り、Twilio Segment CDP(顧客データプラットフォーム)を介して、顧客へのアプローチのパーソナライズに役立てられています。ここまで4社のご講演・事例を要約してきましたが、その共通性のようなものが見え始めているのではないでしょうか。Tovala様ご自身が講演の中で仰っていましたが、ユーザーとのエンゲージメントを円滑なものにしたいという思いがデータ活用を促し、必須のものとしています(関連ブログ1ブログ2)。このデータ重視の姿勢は次のIBM様のご講演にも現れています。

 ❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約19分、7分10秒時点まで早送り)❏❏ 講演概要はこちら ❏❏


IBM 様(北米)

筆者自身、顧客エンゲージメントにおけるデータ活用の重要性については意識があるつもりでしたが、このIBM様の講演内容には少し意外な一面を感じました。というのも、顧客エンゲージメントにおけるデータ活用は、やもするとマーケティングや販売の局面(例: 広告効果の促進、カート放棄対処)で語られることが多いためです。IBM様によるTwilio Segment CDPの利用(英語のお客様事例)は、マーケティングや販売といった利害関係者向けでもありますが、ここであえてハイライトすべきはカスタマーサクセスからの利用シナリオにフォーカスを置いている点でした。これは講演者のアレックス・ベライーズ氏がプロダクトマネージャであることと密接に関連していたのだと思います。

IBMandSegmentJP

ここでのCDP(顧客データプラットフォーム)利用は200を超える多岐に渡るIBM様のソフトウェア製品をデータソースとしており、利用前のプロダクトページ閲覧、無料サインアップ処理、プロダクト管理画面上での実際のプロビジョニング状況、ご利用状況を反映する請求データなど、データを多面的に扱っています。

データソースがこれだけ多岐に渡るとデータスキーマ(データ構造)の策定に頭を悩ませることと思います。ベライーズ氏を始めとする関係各位が編み出したベーススキーマがしっかりしたものであったことは言うまでもありませんが、データの配信先もマーケティング・販売・カスタマーサクセスと多面的になってしまいます。こういったエンドツーエンドの複雑性に正しく与する視点から、Segment CDPのデータ整合性処理のプロダクト「Protocols」(英語ページ) を効果的に活用いただいた点も、一人の聴講者として参考になりました。

講演の後半では、CDP利用の点で優先プロダクトとされたIBM Cloudの製品群においてSegment CDPの実装を進め、プローブを通じてIBM Cloud利用の実態を把握・視覚化し、プロダクトの機能拡張や変更を継続的に実施されたことが言及されています。その成果として、ソフトウェア機能の利用が30%促進されたこと、請求レベルのご利用状況として17%の(収益)増加が認められたそうです。また、顧客の機能利用が薄くなりがちなユーザー動線においてエンゲージメントを促進するポップアップ機能を提供したり、利用状況に応じたアップセル提案が視覚化情報を基に可能となりつつある現状についても触れられています。

 ❏❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約11分)❏❏❏ 講演概要はこちら ❏❏❏


Yahoo! Mail 様および Google 様 (Gmail 部門)

本講演では、弊社のEmailプロダクト(Twilio SendGrid)の担当者がファシリテートする形で、Yahoo! Mailのご担当者様とGoogle Gmailのご担当者様との間で対談が行われました。35分と長めの講演ですが、技術的なトピックを含め盛り沢山の内容です。

まず冒頭部分で、Yahoo! MailやGmailといったESP(Eメールサービスプロバイダ)上を配信されるEメールの8-9割が受信者に望まれないメールで、ESPによる処理を経て結果として受信トレイへ配信されない結果に終わっているというデータが両社から示されました。EメールはROIに優れているコミュニケーションチャネルであるものの、受信者エンゲージメントの視点からは慎重に設計・実践されないといけないということを考えさせられます。

FutureOfInboxJP

次にEメールの配信を取り巻く状況についてこの数年で変わっているのか変わっていないのかといった話題になり、Eメール(技術)そのものは変わっていないものの、Eコマースの台頭などもありユースケースや受信トレイ保護の点で「変わってきた」と言えるだろうとの見解が共有されました。ユーザーとして納得できる部分です。

また、正当な送信者から正当に配信されることを担保するための(送信者/ドメイン)認証系技術のトピックについても講演中何回かにわたって取り上げられました。SPFDMARCといったよく聞かれる技術をベースに、これもお馴染みとなりつつあるBIMIに加えて、VMCARCについても(実装・動向把握していく必要があるという観点から)言及されていました。筆者も恥ずかしながらARCについては把握しておらず、勉強になりました。(参考となる外部資料例: IIJ様の資料、これら技術を網羅的にご説明されている個人の方の資料

Eメールは昔から馴染みのあるコミュニケーションチャネルであり、技術的にはあまり変わっていないように見えることから、皆さま各社の顧客エンゲージメントプログラム実践においては特定のユースケースにおける特定の使い方に限定されているかもしれません。一方で対談後半では、Eメールの表現能力に関する技術AMPSchemaの浸透が今後進むにつれて受信者エンゲージメントに変革がもたらされ(例: 受信したメールの本文画面から離脱することなく商品の予約や購入が完了可能)、Eメールというチャネルの価値がますます見直される可能性があることにも言及がありました。

最後に両社から提言のような発言がありましたが実際にはシンプルなもので、「Sender Guidesを読んで活用してくださいね」というGoogle様からのアドバイス、「ドメイン認証を実装しましょうね」というYahoo! Mail様からのアドバイスでした。基本を押さえることの重要性ですね。

 ❏❏❏ オンデマンド聴講はこちら(約35分)❏❏❏ 講演概要はこちら ❏❏❏


いかがでしたでしょうか。この他にも、Veronica Beard様(アパレル関係)のファーストパーティーデータ活用に関するご講演、IFRC(赤十字)様による人道支援活動(ウクライナ)のご講演(👈物資よりもキャッシュを軸として活動展開)、名刺印刷をこれまでの事業領域とされてきたVistaPrint様のデータ活用を中心としたご講演など、興味深い講演が多数ありますので、顧客エンゲージメントの最前線を行くお客様企業・組織の熱い思いや実践の現場から、皆さまなりの気付きを得ていただければと思います。

ご講演の内容やSIGNALイベントに関して不明点などございましたら、遠慮なく弊社までお問い合わせくださいませ。

次回のSIGNALイベントは、時期やフォーマットについて未だ確定ではございませんが2023年8-11月頃の実施を予定しております(場合によってはアジアパシフィックのハブ都市での開催も検討中)。国内のお客様企業のご講演も例年通り推進してまいりますので、ぜひご期待いただければと思います。

(個々のご講演のオンデマンド聴講については、2023年以降について視聴プラットフォームをYouTube等の他プラットフォームへ移行する予定です。そのため、本ブログ記事内のリンクが一部正常動作しなくなる可能性があり得ますので、その際は大変お手数ですが筆者までご連絡をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします 🙇  連絡先: hmasaki [at] twilio.com)